主人公ってかっこいいですよね。
海賊船の船長が伸びる腕で数々の技を繰り出し、敵を倒したり、
魔法の世界に生きる少年が己の筋肉だけで魔法に打ち勝ったり、
アンパンが意地悪してくるバイキンをパンチで倒したり。
数々の挫折を味わいながらも、決して諦めずに、最後には大きな壁を乗り越えていく。
その姿に感銘を受けるし憧れます。
必殺技や変身するシーンを誰しも一度は真似したことがあるのではないでしょうか。
「主人公かっこいい!!」と思うその一方で、私はこうも思います。
「主人公以外の人は、どう過ごしているのだろう??」
物語は、主人公だけでは成り立ちません。
主人公の周りにいる仲間や家族、ライバル、いわゆる“悪役”と呼ばれる敵対する人たち、村人A・Bと名付けられるようなモブキャラ。
色んなキャラクターがいて、それぞれに『正義』があり、お互いにわかり合えることも対立することもあるから物語は動いていきます。
時には「スピンオフ」と呼ばれる形で、そのような脇役たちにもスポットライトが当たることもありますが、スピンオフも作れないようなキャラクターがいるのも事実です。
そしてそれは、物語も人生も同じだと私は思うんですよね。
誰が何と言おうと、その人の人生の主役は絶対的にその人自身であり、周りにいるどんな人でも脇役になります。
誰しもが主人公であり、脇役でもある、ということです。
たとえ「野球漫画の主人公かよ~」と思うような、異次元の大活躍をする二刀流の野球選手がいたとしても、『私が主役の物語』の中では「野球選手A」とエンドロールで表示される脇役になると思うのです。
そんなことを考えながらプレーパークで過ごしていると、やりたいことをしている子どもたちの主人公感はとてつもない、ということに気がつきました。
全身泥だらけになって、真剣な顔で築山に水路を築いていく『土木職人』
木工で剣を作り、腰に携えて堂々と歩く『勇者』
焚き火が点かないところにさっと現れて、火を点けてくれる『火の神』
砂鉄を集めて観察したり、水を使って実験したりして過ごす『研究者』
レールを上手に並べ、その上に列車を走らせる『車掌さん』
「やりたい!」を原動力に、その子自身が主人公の物語を紡いでいます。
その物語は子どもたちそれぞれで異なり、同じものは一つとしてありません。
時には、主人公同士の譲れない『正義』がぶつかり、喧嘩やおもちゃの取り合いになってしまうこともあります。おもちゃを取り合う子たちの眼には、そのおもちゃは金銀財宝よりも美しく、魅力的で、輝いて見えていることでしょう。
少年漫画でライバルと切磋琢磨して成長していく主人公のように、子どもたちも他者とぶつかる中で価値観のすり合わせをしたり、問題解決に至る思考を身につけたりして、大人になる上で必要なコトを一個ずつ学んでいるのです。
そして、遊びを通して『自分』というものを築き上げているのです。
プレーパークで過ごす“主人公”たちの姿を見守りに、大人の方もぜひ冒険はらっぱにいらしてみてください。
どんな物語よりも尊くて素敵で、かけがえのない日常がそこには広がっています。
(プレーワーカー りゅう)
p.s. 写真は、物作りの部品にするために鉄板を折りたい!とのことで試行錯誤している少年たち。折れた時のその子たちの充実した表情は、今でも忘れられません。